ムーアの分類を理解していることで、周手術期の変化をイメージすることができます。今回は、ムーアの分類の考え方や使い方について説明をしていきます。
手術侵襲を受けた患者には生体反応がおきます。ムーアはこの生体反応について手術侵襲から回復過程を4相に分類しています。術後の患者に急激に起こる独特な生体反応が正常であるか異常であるか判断するためにはムーアの分類をしっかり理解する必要があります。
神経内分泌系がメインとなります。手術侵襲により大きなストレスを受けた身体は、このストレスに対抗するために様々なホルモンの分泌が活発となります。
- アドレナリン:心拍数・収縮力の増加
- ノルアドレナリン:血管は収縮し、血圧は維持される
- ADH・アルドステロン:水・Naの再吸収の促進により、尿量が減少
- グルカゴン:グリコーゲンのグルコースへの分解が促進される。筋タンパク質や体脂肪が分解され糖新生が促進される。
第1相は手術侵襲から身体を守る反応がメインとなります。この時期の看護として、患者のバイタルサインを観察できる・バイタルサインの異常と正常が分かる・患者の苦痛(疼痛・嘔気・寒気など)を最小限にすることが大切となります。
この時期は、神経内分泌反応が鎮静化に向かい、水電解質平衡が正常化してきます。そのため、サードスペースに貯留していた水分が体循環系へ戻り、Naと過剰な水分は尿として排出されます。
患者のバイタルサインや尿回数(尿量)が正常となったら、第2相に移行したと考えて良いと思います。傷害期では、患者の苦痛を最小限にするため身の回りの援助は看護師が行います。しかし、過剰な援助は患者のできる力を奪うデメリットもあります。第2相から、患者ができることはやってもらように援助していきましょう。ただ患者にやってもらうだけでは、「昨日までやってくれたのに・・・、こっちはまだ痛いんだぞっ」と反感を持たせてしまいます。そうならないように、早期離床のため・筋力回復のため・術後合併症予防のためと事前に説明することが大切です。
タンパク質代謝が同化傾向となり、筋タンパク質が回復する。
第3相は、日常生活が正常化します。短期入院となるため、この時期は退院して自宅で過ごす患者が多いです。しかし、病気があって手術をしています。果たして、退院してそれで終わりですか?いえいえ、退院してからが最も大切です。患者は、社会復帰をすることを目標に手術を受けにきています。手術を受けることでの合併症、注意事項を理解し退院する必要があります。
そのため、退院前には患者指導が必要となります。創の管理・受診の目安・食事指導・禁忌肢位など疾患や術式によって様々です
筋タンパク質の合成がすすみ、脂肪が蓄積される。
第4相は、病気とうまく付き合いながら社会復帰ができていることが理想です。